シルバー人材センターに登録した父と、バタフライエフェクト with iPhone8

 世間は好景気に沸き、アベノミクスの成果だと謳われているけど、無縁の人だっている。たとえば、僕の父だ。齢60を数え、元雇用者側でプライドが高く、機械音痴。旧友にさえ見捨てられた。

 

 バイトの張り紙を見ては連絡し、電話口でていよく断られた。行き着く先は人手不足の業界で、一時期は深夜の高速道路で高所の仕事をしていたらしい。それすらも長く続かず、ここ最近はシルバー人材センターに登録して、その斡旋で働いていた。

 そんなある日のこと、父は「ガラケーが壊れてしまった」といい、手にはスマホが握られていた。寝耳に水である。

 母に事情を聞くと、現場で年下の人間に「今どきガラケーはない」「LINEすら使えないのか」「連絡が取れない」とバカにされたらしい。それが悔しかったのだろう。家族に相談もなくドコモへ出向き、契約を変更してきたのだ。

 契約した以上今更なにもいえないし、腫れ物に触れるように扱っていたけど、請求書がきて驚いた。ファミリープランのシェアパック5。まぁ、3人暮らしだしわからなくはない。  

 請求総額1ヶ月1万円。おいおい……。

 ギガの使用量はわずか0.5。LINEも使えない。ドコモショップの講習会に行けば? と聞けば、プライドを許さないのか断られる。やってることといえば、カケホーダイプランでLINEの無料通話を受けることだけ。それすらも電話帳の同期と、ガラケー時代は非通知にしていた取り立て屋からの受信を拒否できず、イライラしている。

  父にスマホは無用の長物だったのだ。   

 

 そんな状況で、僕と母は父の契約を親回線とし、小回線として契約することにした。カケホーダイプランなしなら、月額2000円ほど。MVNOと変わらない。

 同時に僕は機種変した。

 僕の元々のスマートフォンHuaweiのnova lite。SIMフリー端末だ。

 一家で最初にスマホを手にしたのは弟だった。就活のためLINEが必須になり、止むに止まれぬ事情から、手を出した。当時は極貧の時期、実家を差し押さえられる直前で、経済的に厳しかった。弟はネットの中古ショップを回り、一万円台でサムスンのギャラクシーを購入したらしい。

 その後、母のガラケーが故障。買い直すにも金がいる。母はガラケーだったから職場のLINEグループに入られず、有志がそれを撮影してメールで送ってもらっている状況だった。だからスマホへの買い替えを希望した。

 就活に成功した弟は、お給料で自分の分は買うからとギャラクシーを母に譲った。

 このギャラクシーはその後セキュリティサポートを切られ、アプリのアップデートすらままならなくなったことから別端末を購入することに。そこで買ったのがこれというわけだ。

 その後ほどなくして母は自分のお給料で別端末を購入したので、お下がりとして僕のもとにやってきた。

 この端末は高級感あふれるフォルムに、大画面、使いやすい独自UI、動画サイトを見るだけなら苦労しない性能と、低価格帯なのに名機だった。だが問題もあった。ストレージが16GBしかない。

 アップデートがあるたびにストレージを開放しろと指示が出るけど、不必要なアプリはいれていなかったから頭を抱えた。消しては入れての繰り返し。

 

 そんなときに降って湧いたドコモの小回線契約だ。

 今なら端末の購入サポートを受けられる。

 パンフレットを見ると、今ならiPhone8の64GBが月々810円ほど。実質負担二万円ほどで手に入る。ブルジョア向けだったiPhoneが手に入る。

 僕は浮き上がって、よく考えないままこれに決めた。

 そして問題が起きた。小さすぎるのだ。画面は極小だし、文字も極小。アップルの新端末が大きすぎると話題だけど、Huaweiの端末を経験した僕にとっては旧来のiPhoneは小さすぎた。

 いろいろ工夫して本体とアプリの文字サイズを拡大したけど、ツイッターは投稿画面の表示比率がバグってしまい、メモ代わりのスクショはグーグルフォトにバックアップ、体調管理はグーグルカレンダーで、複数メールサービスはGmailでまとめている。というわけで、Androidでよかった。

 どうしてあのとき、同価格帯のAndroidソニーXperiaにしなかったんだろう。

 ここまで明確に買って後悔したのは初めてかも。二年縛りが終了するのは、東京五輪のはるか後。どうしたもんかな……。

 

今日の教訓 

iPhoneを使うものがブルジョワなのではない。

ブルジョワiPhoneを使うのだ。

貧乏人は背伸びして、ブルジョワの真似をしてはいけない。