「ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか」について、海外ドラマ好きからの雑な意見

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上記の記事に対しての僕のブックマークがこれ。

ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか - 宇野ゆうかの備忘録

海外ドラマ好きからすると、PCのせいでキャストの人種構成が限定され、明らかにつまらなくなった時期があるから、反発する声も分かる。だけど「メジャークライム」みたいなドラマも出てきたし、製作者側の慣れだなと

2018/12/01 18:56

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 海外ドラマ、と一口にいっても、日本の高齢者に人気の「韓ドラ」、かつてお世話になった洋画劇場の延長線上にある「アメドラ」、Netflixでお手軽に視聴できる「欧州ドラマ」、そのほかにも最近評判のいいカナダの作品や、学園モノのBLシチュエーションを実写でやってるインドネシアのドラマとか、まぁ色々あるわけです。

 ここでいいたいのは主にアメドラですね。というか、僕はとくにこだわりがなければ、アメドラばかり見ています。予算が多いほうが、内容が期待はずれでも得られるものが多いのでね。

 で、ブックマークであげた「メジャークライム」は「クローザー」という刑事ドラマの直接的な続編に当たります。

 主役の女性警官が降板を希望したため、人気のうちに終了。主役だけすげ替えてリニューアルしたのが「メジャークライム」です。

 前作から引き続いて、作品の魅力となっているのが多様な人種構成と生い立ちです。白人キャラがいるのはいつものことで、黒人枠があるのも見飽きた構成です。最近はここに南米系がはいってきたり、中国系の視聴者を取り込むために中国人(メンタリストとかわかりやすい)をいれるわけですが、メジャークライムは一歩先を行きます。

 前作から引き続いて、ブスで有能な中年女性(ハリウッドでは仕事が少ないことで有名)を主役にすえ、DV家庭で育った男娼の少年まで用意。しかも、物語の中心的扱い。

 ところで、お気づきですかね? 男娼なんですよ。それってつまり”ゲイ”なの? 

 彼の初登場は前作「クローザー」*1のシーズン終盤からなんですが、この部分にはなかなか触れられません。というか、触れられない雰囲気なんです。なぜなら、彼は男娼として客を取った現場で、連続殺人犯の遺体投棄を目撃した唯一の証人。少年は証言することを引き換えに、自分の母親を探し出すことを要求します。で、探してみたら、薬中だし、ゴミみたいな男とつるんでるし、気がついたら犯罪に巻き込まれているし……。シーズンを重ねるごとに、彼は確固たる意思の元親から独立しようとし、その苦闘を見てきたからこそ、今さら聞けないんですよね。

 そんななか彼は事件を通して自身のセクシャリティと向き合うこととなり、自分の意思で周囲に助けを求め、周りもおよそ無関心そうなルイ・プロベンザ(お爺ちゃん刑事)まで試行錯誤しながら寄り添おうとする。

 これだけで100点与えたいんですが、それ以外のキャラもいいんです。たとえば、先程あげたルイ・プロベンザがかつての相棒とあったら、性適合手術を受けて女性になっていたり。それに失望しながらも、いっしょに事件を捜査するうちに、かつての相棒の面影を見出し、打ち解けたり(なお、めっちゃブスでデブです。恋愛感情からではない)。

 職場仲間のフリオ・サンチェスは僕からすると見るからにメキシコ人なんですが、ただのメキシコ枠じゃなくて、スペイン語が話せるので、移民系の事件では通訳を担ってくれたり、ギャングの文化にも精通していて、戦闘員みたいな立ち回りしているのに物知り博士みたいに振る舞ったり。*2

 アジア系のマイク・タオが出てきたときは、「デクスター」のあとだったので、はぁー(クソでかため息)って感じだったんですが、奥さんが日本人で、その情報が明かされた経緯も日本と関係のある思いがけない事件が発端です。しかも設定だけで終わらず、メインキャストが結婚することになったときは、夫婦生活を長続きする秘訣として、「トイレは2つ」とアドバイスするんですよね。アジア人は毎日風呂入るから、風呂とトイレが一体型となってるユニットバスが主流のアメリカじゃ、困っちゃうんですよ。

 

 僕がメジャークライムを好きな理由って、人種構成を多様にしたんじゃなくて、こうしたキャラクターの生い立ちを多様化するために、人種構成を多様にしているからなんですよね。黒人キャラが死んだから黒人キャラを補充ってのは、「リゾーリアンドアイルズ」*3で出てきた展開なんですが、そういう小手先だけの、制作者側の傲慢さが透けて見えるのとは違うんですよ。

 お前ら人種構成多様にすれば喜ぶだろう、みたいな。

 だけど人種だけ取り揃えたって、中身が伴っていなければ、それってなにもフェアになってないじゃないですか。

 海外ドラマ好きあるあるだと思うんですが、「日本」あるいは「日本的要素」が出てくるとヒヤヒヤするんです。忍者かなぁ、侍かなぁ……と。*4で、出てくるのがビニール袋に生蛸入れた女性だったり(CSI科学捜査班)、アニメ好きのロリコン野郎だったり(クリミナル・マインド)、女体盛りだったり(CSI科学捜査班)、くっそ適当な道具で入れ墨ほってもらってるヤクザだったり(CSI:マイアミ)、くっそ長い箸で具材を盛ってるおでん屋だったり(BONES)するんです。あとは、日本人役なのに韓国人や中国人が演じて片言の日本語を喋っていたり(X-MEN)、むしろ一言も話させなかったり(デッドゾーン)。君らアジアを一つだと思ってるみたいだが、言語も社会制度も違うからな、と愚痴りたくなる。*5

 そうした中で、「パーソン・オブ・インタレスト」で某作品をリスペクトしたとしか思えないエピソードを、時代劇の映像やサムライ7を背景に登場させてごまかせつつ描いてくれたり、「グリム」で妖怪のくだりがでてきてくれたりするとほっとするわけです。そして、そのさきにあった理想郷が「メジャークライム」なんです。ここが一番とは思わないんだけど、現時点では一番マシ、みたいな。

 

 アメドラは小山力也さんの吹き替えの印象しかない「24」以降、TV局制作からスタジオ制作が主流になり、近年はネットフリックに代表されるようなストリーミングサービスがスポンサーの意向やTV局のレーティングに配慮せず好き勝手にやるようになったおかげで、すごいことになっています。いずれ「メジャークライム」を超えるようなドラマも出てくるんじゃないか、と予想します。

 今のところの対抗馬は「MR. ROBOT」かな?。中国を悪の枢軸扱いしているので、中国人は嫌がりそうだけど。そう簡単に切り捨てられないほど、この作品は複雑です。*6

 

 ダラダラとまとまりのない文章を書いたけど、僕がなにがいいたいかというとね。アメリカで制作されるアメドラを見ていると、ポリティカル・コレクトネスの必要さを痛感するんです。それはくっそ適当な日本や日本的要素に遭遇して傷つくからだし、同時にリスペクトしか感じない等身大の描き方をするドラマと遭遇するからなんです。

 おそらくですが、ポリティカル・コレクトネスを日本でも追求すると、過渡期のアメドラのように、くっそ適当で制作者側の傲慢さが垣間見えるしろものが出来上がると思います。TV番組の制作環境くっそ悪い癖に、それを棚上げしてテレビドラマの制作現場を神聖視しながら電通を叩くようなドラマがでてきたり、くっそ女性の上司少ないくせに、くっそ女性の上司が少ない民間企業を女性キャラが叩くドラマがでてきたり。あとは、在日枠があったり、トヨタのお膝元を舞台に日系ブラジル人が出てきたり。*7。 

 制作者側は萎縮し、表現の幅も狭まると思います。だけど表現の幅が萎縮するのは、なにもポリティカル・コレクトネスだけのせいではありません。アメリカの長編作品が好き勝手にやりだしたのは、カトリックが入っているMPAA(アメリカ映画協会)を通さなくても映画を公開できる環境(Netflix)ができあがったからです。

 日本ではVODが未成熟ですから、規制に濃淡が生まれず先行き不安ですが、Netflixに征服してもらい会員数が1000万人規模になれば、日本産のオリジナル番組に割り振られる予算も増えて、それなりに見れるものもが増えるんじゃないでしょうか。*8

 

 ところで、皆さんはNHKで放送されたドラマ「フェイクニュース」をご視聴になられましたか? 脚本を務めたのは「逃げ恥」の人だって。知らんけど。

 僕これを見逃し配信で視聴したんですが、第一話で在日3世の子が出てくるんです。ライターを生業とする主人公がテコンドーをやっていたことから、反日記者扱いされるんですね。で、編集長から「日本人です」って公表しろ、と迫られるんです。

 主人公はそれを断固拒否するんですが、後日同僚から在日3世なんでキツかった、と告白されるんですね。

 これってポリティカル・コレクトネスに配慮してるんですかね? リアリティあるシチュエーションだと思ったんで、ポリティカル・コレクトネス関係ないと思います。 

 僕はテレビの「ネット炎上ネタ」が大嫌いなんですが、なぜならそれが語られるとき、レイシズムが脱色されているからなんですよ。僕はサッカー大好きなんで、印象に残ったとある事件があります。サッカー選手のハーフナーマイクが彼女を連れているのをアディダス社員にツイッターでつぶやかれたとき、ものすごく人種差別的なツイートをされたんですね。当然社員は炎上。

 それを後年NHKがネット炎上の特集で取り上げたんですが、当たり障りのない文面に書き換えられていて、むしろなんで炎上したのかわからない内容になっていたんですね。くそくだらん、テレビって糞だわ、そう思いました。

 ポリティカル・コレクトネスを追求した結果、アメドラのように制作者側がレイシズムを直視せざるおえない環境になるなら、それもありかなぁ、と思います。繰り返しになりますが、規制の濃淡が生まれない日本の状況では、先行き不安ですが。

 

追記

「ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか」について、海外ドラマ好きからの雑な意見 - サラダ好きのくろーん

じゃあ、そのポリコレ棒を振るった先はそんな人種めいたものでしたかね?そういうフェイたるなところは全然無視して叩きやすいところだけ叩くから嫌われてるのでは?検閲利権も狙ってるしね

2018/12/02 00:35

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 フェイタルの意味がわからないので、ググりました。致命的、という意味らしいです。

 僕には「ポリコレ棒」のニュアンスがよくわかりません。

 ここでは「ポリティカル・コレクトネスを理由に攻撃すること」と僕的に定義します。

 当然ですが「ポリティカル・コレクトネスについて考えて取り組んでいくこと」と、「ポリティカル・コレクトネスを理由になにかを攻撃すること」は別問題です。

 マルコムXは黒人の人権運動では過激派でしたが、彼を否定することと、黒人の人権問題に取り組むことは両立しますよね?

 これも同じです。それはわかってもらえると思います。叩きやすいところだけ叩いている人がいて議論が歪んでいるのなら批判すればいいし、批判することも面倒なら、嫌になればいい。

 だけど、それは「ポリティカル・コレクトネスを理由になにかを攻撃する人のこと」であって、「ポリティカル・コレクトネスについてどう取り組んでいくのか」は別の話だと理解してほしいです。

 

追記2

「ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか」について、海外ドラマ好きからの雑な意見 - サラダ好きのくろーん

良い作品は規制されたからできるんでなくて、クリエーターが社会情勢を考えて作るから生まるんだって。プリキュアの男の子だってお姫様に成れると伝えたように。

2018/12/02 06:58

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 これについては、僕もそう思います。ポリティカル・コレクトネスが重視される世の中になって、クリエイターが社会情勢を考えて作ってくれたほうがいいと思います。NHKのドラマ「フェイクニュース」を引き合いにだしたのも、そういう意図でした(実際の炎上事件を題材に、その裏にあるレイシズムを昨今のネットの風潮を交えて脚本にうまく落とし込んでいる。)。

 

「ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか」について、海外ドラマ好きからの雑な意見 - サラダ好きのくろーん

メンタリストのキンブル・チョウは韓国系アメリカ人の設定やで。

2018/12/02 11:07

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 素で間違えました。すみません。同時期に全く同じ題材で放映されていた「ライ・トゥー・ミー」のほうが好きだったんで、あっちが打ち切られるまでは横目にチラチラとしか見ていなかったんですよね。ちゃんと見始めたのはレッド・ジョンの手先が署内を出入りするようになったぐらい(シーズン4?)からです。

 

「ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか」について、海外ドラマ好きからの雑な意見 - サラダ好きのくろーん

“アジア系のマイク・タオが出てきたときは、「デクスター」のあとだったので、はぁー(クソでかため息)って感じだった” アジア系の変わり者の鑑識でハゲって共通点でそう思ったのかな…

2018/12/07 15:29

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 クローザーの第1シーズンはもう10年ほど前のことだから記憶もおぼろげだけど、当時は戦慄するほど嫌味なキャラしかいなかったんですよね。主人公は性格キツイ嫌味なキャラだし、ラッセル・テイラー派の警官たちは職場で公然と嫌がらせしてくる。そこへマイク・タオが出てくるもんですから、「デクスター」みたいなエロアホ間抜け路線か、もっと別の邪悪な何かか、と身構えていたんです。実際はデビッド・ガブリエル君並みにシリーズ初期の良心だったわけですが。

「ポリティカル・コレクトネスは表現の幅を狭めるか」について、海外ドラマ好きからの雑な意見 - サラダ好きのくろーん

これを手柄と謳うなら、同時にイケメン男娼、ミステリアスな美女がレズという新たなステロタイプを量産したのもポリコレという自覚も必要では。ポリコレが無闇に悪とは思わないが、表現との兼ね合いは斯様に困難

2018/12/03 15:41

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 そのイメージ像は少し古いんじゃないかと。それこそ、僕が記事中で触れていた、制作者の傲慢さが透けて見えるような配慮のころのキャラ像です。

 「クローザー」に出てくるメインキャストで、男娼のラスティ・ベックは控えめに見てもブスでヒョロヒョロで、イケメンとは程遠いです(ベン・アフレックのような顎割れがセクシーと言われる国なので、僕と美的センスがあわないだけで、アメリカではイケメン扱いされているのかもしれませんが……)。

 ミステリアスな美女がレズビアンだったという設定は見飽きたものがありますが、普通の中年女性がレズビアンだったというくだりも最近は見かけますし、ステロタイプ(ステレオじゃないの?)を量産したと批判されていますが、かつてはヘイズ・コード(表現規制)のせいで、同性愛者は出せなかったんですよ? 時代背景を考えれば、むしろステロタイプの氾濫よりも、新たな表現の模索、創出だったんではないでしょうか?

 

*1:この作品もすごくって、主役の女性がシーズンを重ねるごとに更年期障害に悩まされるんですね。キレやすく、発汗しやすくなる。おまけに不妊治療まで頑張りだして、初期の嫌味のキャラ(「ありがとう、どうもありがとう」が口癖)が愛おしさを通り越して居た堪れなくなる事態に

*2:ブレイキング・バッドでは小便チビるほど怖い麻薬ディーラーを演じていただけに、どこが心を許せないところがあるw

*3:なお、この変更はキャストの男性がオフに自殺したことによるもの。一応社会的風潮に配慮してるみたいで、女性が追加された。なお、シーズン1で「積極的是正処置のおかげで警官になれたようなやからが~」と視聴者側の反応を先回りしたようなセリフが出てきます。面白いです。

*4:エストワールドシーズン2には両方出てきますが、相対的にまとも。というか、邦画を超越した予算規模で、時代劇のセット組んでいて僻む

*5:とはいえ、影も形もないのも寂しい。僕の大好きな「ブレイキング・バッド」は白人至上主義者出すくせにアジア人の影が薄いし、母の大好きな「名探偵モンク」や「ホワイトカラー」では、前者はクリーニング店のおばちゃん、後者は靴下のくだりで終わりですからね。

*6:なお、シーズン2はシーズン1の時系列の穴埋めばかりしていて、糞。ウエストワールドシーズン2が振り返りを最初の3話で終わらせたのは英断だった。

*7:リーマンショックのあと帰っちゃったけど

*8:現時点でもアウトサイダーみたいな映画がありますし